マセラティはやはりモデナで作られるべき
マセラティというブランドは、単なる自動車メーカーではない。そのすべてはモデナという街から始まった。石畳の道、古いバルサミコの香り、そして歴史的なViale Ciro Menotti工場――この街全体がマセラティの一部だ。しかしここ近年、GhibliやQuattroporteやLevante。そしてGranTurismoやGranCabrioといった量販拡大のため、トリノの工場で生産されてきた。ご存じの通りマセラティはもともと手作業による少量生産によるクルマ作りに価値があったわけだ。それがいつの間にか数年前から目標生産台数5万台だの8万台だのとぶち上げた結果、需要に対して過剰な供給が積み重なってマセラティがだぶついたのだ。それによって、独占性の価値も薄れてしまった。
本来マセラティのニーズは限られていると考えます。筆者はいつも言っている通りマセラティは売れて欲しくないのだ。それでもなんとかなるのがマセラティなのだ。無理やり伸ばしてもメルセデスやBMWのごとくモデルチェンジも、お金がないので頻繁にできない、結果、販売台数も伸びない。身の程知らずのことはしてはいけない典型的な事例になってしまった。ここにきて、ついにマセラティがモデナ回帰を発表。これは、ただの工場移転ではなく、「マセラティが自分自身を取り戻す」という宣言に近い。しかし、実際はまだグレカーレはローマ近郊の工場で生産されているので、100%とは言えないが。
モデナ回帰の詳細
ステランティスは2025年5月、GranTurismo/GranCabrioの生産を年末までにモデナ本社工場に移すことを決定した。これにより、モデナ工場は再びブランドの中心地としてフル稼働することになる。
- 移管対象モデル
- GranTurismo
- GranCabrio
- ミラフィオーリ工場での最終ロット
8月、ミラフィオーリでは最後のGT系モデルがラインアウト。
長年この地で生産してきたスタッフたちは、退職や異動を余儀なくされたが、その最後の1台を送り出す瞬間は涙なくして見られなかったと現地紙は伝えている。
この移管によって、モデナ工場の従業員は約250名規模で再編される予定。
これまでの限定生産体制から一歩踏み出し、量より質を重視した高付加価値生産に集中する計画だ。
ファクトリー見学一時停止と新体制への準備
現地では8月から10月まで、Factory Tourが完全に休止されている。
これは工場ラインの再構築や観光ルートの刷新が理由だ。
筆者は、昨年このツアーを体験したが、職人たちの手仕事と、わずか数メートル先で組み上げられるエンジンの迫力に息を呑んだ。その光景がさらに進化して戻ってくると思うと、期待せずにはいられない。再開後は、従来の「見学」から一歩進み、ブランド体験型ツアーとして生まれ変わるとも噂されている。
マセラティがどんな未来を見せてくれるのか、乞うご期待だ。
歴史の中で見える“回帰”の意味
マセラティがモデナを離れていた期間は、ブランドの歴史から見ればわずかな時間に過ぎない。
だが、この間にマセラティは自らのアイデンティティを問い続けてきた。
「モデナで設計し、モデナで生まれる」まさしくメイドインモデナ。
これこそがマセラティの存在意義だ。
ステランティスはこの原点を再び強調するために、今回のモデナ回帰を選んだのだと思う。
これからの展望
2025年末、(実際にはクリスマスバカンスに入るので、来年初頭からかも)モデナ工場は再び稼働し、世界中に新たなマセラティを送り出す。そして2026年には、MCPuraなどの新世代モデルも加わり、本格的な「モデナ・ルネッサンス」が幕を開けるはずだ。この変化は、単なる生産拠点の移動ではない。
モデナという街、そしてマセラティというブランドが未来へ向けて一つになるための大きなステップだと確信している。こうご期待のマセラティ。今後もフォローしていきます。