筆者が参加したドロミティ・ビトゥルボツーリングの記事が掲載してあるヤングタイマーレトロという雑誌にもう一つ興味深々の記事があったので紹介する。
サブタイトルは、「Cavallino e Tridente due eccellenza dell’automobirismo che hanno reso grande il nostro paese nel mondo.」(純血のイタリア車、カヴァリーノとトライデント、自動車業界における二つの卓越性が、我が国を世界的に偉大にした。)
新世紀の幕開け:2台のイタリアンスポーツカーの物語
1990年代から2000年代初頭への転換期
1990年代から2000年代初頭への移行は、単なるカレンダー上の日付変更だけでなく、それは自動車産業における文化的・技術的・美的な分岐点であった。
- 90年代の鋭く力強いラインのデザインから、2000年代には流れるような空力的フォルムへと進化。
- アナログなメカニズムがデジタル革命と融合し始めた時代。
この過渡期に誕生した象徴的な2台が、
- Ferrari 360 Modena:テクノロジーで未来を切り拓く革新的スーパーカー
- Maserati GranSport:伝統的なクラフトマンシップを重視したグランドツアラー
この2台は、まるで双子のようでありながら対照的な存在であると述べている。
Ferrari 360 Modena:革新の象徴
デザインと構造
1999年のジュネーブモーターショーで発表された360 Modenaは、F355から大きな飛躍を遂げたモデルであった。
- Pininfarinaが手掛けた最後のV8ミッドシップFerrari
- F355比で40%軽量化されたアルミ製スペースフレームを採用
- サイドエアインテークやリアグリルなど、空力性能を活かした官能的なラインPDF書類 15
そのボディは、曲線美と機能性を両立させた革新的なデザインで、多くのファンを魅了したという。
パワートレインと走行性能
- エンジン:3.6L V8自然吸気、40バルブ
- 最高出力:400CV @ 8,500rpm
- 最大トルク:373Nm @ 4,750rpm
- 0-100km/h:4.5秒
- 最高速度:295km/h
- 重量:1,390kg
- パワーウェイトレシオ:3.5kg/CV
エンジンは8,500rpmまでスムーズかつ爆発的に回り、「まるでシンフォニーのようなサウンド」と評される官能的な音を奏でるとこの記事で掲載されている。
トランスミッション
2つの選択肢があり、
- 伝統的なゲート式6速マニュアル:機械的な感触と純粋な操作感
- F1セミオートマチック:150ミリ秒の高速シフトで、当時の最新技術を象徴
特にF1マチックは都市部では扱いにくい面もあったが、スポーツ走行時には圧倒的なパフォーマンスを発揮したと解説者はコメントしている。
デザイン哲学:Less is More
360 Modenaは、ウィングや過剰な装飾を排したシンプルで美しいデザインが特徴。
その「無駄を削ぎ落とした美しさ」は20年経った今でも色褪せることなく、古さを感じさせないという。
このデザインは、当時の時代背景ともリンクしていました。
- 携帯電話がカラー表示になり始めた時代
- 映画『Matrix』
- PlayStation 2とレースゲーム『Gran Turismo』『Need For Speed』
Ferrariは単なる「速い車」から、ライフスタイルと革新性を伝えるブランドへと進化する必要がありました。
また、このレポートには360Modenaのオーナーの意見も添えている。
「フェラーリは赤じゃなきゃダメ?そんなことはない。黒はより魅力的で、攻撃的で、それでいて控えめだ」
このオーナーはAston Martin V8 VantageやAudi R8、Lamborghini Gallardoと迷った末に360 Modenaを選択したという。購入後は非常に大切に扱い、年間わずか数百kmのみ走行。現在も走行距離40,000km以下を維持しています。
Maserati GranSport:情熱のグランドツアラー
背景と誕生
Ferrariが先進技術で未来を切り開こうとしていた同時期、Maseratiはクラシックなグランドツアラーとしての魅力を追求しました。
- 2004年発表、2005年発売。
- 4200GTをベースに大幅改良。
- 専用19インチホイール、強化サスペンション、上質なインテリアを採用。
デザイン
ジョルジェット・ジウジアーロが手掛けた基本デザインをベースに、よりスポーティでアグレッシブな仕上げに。
- 専用フロントバンパー
- 蜂の巣状グリル
- カーボンファイバーとレザーのインテリア
パワートレイン
- エンジン:4.2L V8自然吸気(Ferrari製ベース)
- 最高出力:400CV @ 7,000rpm
- 最大トルク:451Nm @ 4,500rpm
- 0-100km/h:4.9秒
- 最高速度:290km/h
- 重量:1,680kg
- パワーウェイトレシオ:4.2kg/CV
特徴と魅力
GranSportは日常使いではなく、特別な時間を楽しむための車です。
- Cambiocorsaトランスミッションは荒い操作に弱い
- 内装素材が経年劣化しやすい
- 頻繁なメンテナンスが必要
しかし、これらは単なる欠点ではなく、この車が持つ個性であり、オーナーとの深い関係性を生み出します。
比較:360 Modena vs GranSport
項目 | Ferrari 360 Modena | Maserati GranSport |
---|---|---|
エンジン | 3.6L V8 NA | 4.2L V8 NA |
最高出力 | 400CV @ 8,500rpm | 400CV @ 7,000rpm |
0-100km/h | 4.5秒 | 4.9秒 |
最高速度 | 295km/h | 290km/h |
車両重量 | 1,390kg | 1,680kg |
トランスミッション | 6速MT / 6速F1 | 6速Cambiocorsa |
キャラクター | 先進的で洗練されたスーパーカー | クラシックなGTカー |
まとめ:2つの哲学が生んだ傑作
Ferrari 360 ModenaとMaserati GranSportは、同じグループから生まれながらも全く異なる価値観を体現している。
- Ferrari 360 Modena:未来への扉を開いた革新的スーパーカー
- Maserati GranSport:伝統を守りながら進化したクラシックGT
20年以上経った今、両車はヤングタイマーとしてコレクターズアイテムとなり、その個性と歴史的価値はますます輝きを増していると記述されている。
マセラティ・グランスポーツ:イタリアンGTの美学と情熱
誕生の背景
フェラーリがアルミフレームと先進的な電子制御で未来を切り開いていた一方、マセラティは異なるアプローチを取っていた。そのためマセラティは、フェラーリと同じグループに属しながらも独自の魂を持ち、GranSportという車を生み出した。GranSportは単なる「強化版Maserati Coupé(通称4200GT)」ではなく、ブランドが再び自らの伝統を証明するための作品であったという。
2004年に発表され、2005年に市販化。
このモデルは「GTカーの快適さ」と「レーシングカーの魂」を融合させることを目指しました。
主な改良点は以下の通りです。
- エンジン出力向上(+10馬力)
- Cambiocorsa専用の変速プログラム(より素早いシフトチェンジ)
- 新設計の19インチホイール
- 強化されたサスペンション
- インテリアにはMC12と同素材のテクニカルファブリックを採用
これにより、GranSportは既存の4200GTよりもスポーティで洗練されたキャラクターを持つことに成功したという。
デザイン
デザインはジョルジェット・ジウジアーロが担当。大きな変化ではなく、細部の改良でより攻撃的な雰囲気を演出しています。
- 新型フロントバンパーとより主張の強いサイドスカート
- 蜂の巣状のグリル
- 専用19インチホイール(スワローテールデザイン)
- カーボンファイバーと高級レザーのインテリア
特にMC12と同素材のファブリックは、見た目と触感は素晴らしい一方、耐久性に難があり、専門の職人による補修が必要になる場合がある記載されている。
走りとメカニズム
GranSportには**Cambiocorsa(電動制御シーケンシャル6速)**が標準装備。
現代のスムーズなオートマチックとは異なり、シフトチェンジ時には明確な衝撃を伴う。
- 0-100km/h加速:4.9秒
- 最高速度:290km/h
- 重量:1,680kg
- パワーウェイトレシオ:4.2kg/馬力PDF書類 7
エンジン
- 形式:4.2リッターV8自然吸気(90°)
- 出力:400馬力 / 7,000rpm
- トルク:451Nm / 4,500rpm
- 出自:フェラーリ製エンジンをベース
4000回転を超えると排気バルブが開き、静かな低音から咆哮へと変貌。
これはまさに「フェラーリの心臓を持つマセラティ」という表現がふさわしいエンジンであると記載されている。
所有する喜びと苦労
こちらのGranSportのオーナーも完全オリジナルの状態で維持することに情熱を注いでいるようで、主にクラシックカーのイベントやミーティングで走らせる程度で、年間走行距離はわずか400kmほどだという。しかし、この車には注意すべき弱点も存在します。
- Cambiocorsaは乱暴な操作で摩耗が早い
- サスペンションアームとクラッチは耐久性に課題
- 内装ファブリックが劣化しやすい
- 頻繁で細かなメンテナンスが必要
これらは「欠点」というよりも、この車が持つ個性であり、オーナーとの密接な関係を象徴しているものだと締めくくっている。
文化的価値
GranSportは、2000年代初頭のマセラティ復活期を象徴するモデルです。
その存在は、量産車にはないアナログな魅力を残しつつ、現代的な技術も取り入れた「過渡期の傑作」といえます。
- 生産台数は3,000台未満と希少
- ドイツ製GTカーとは一線を画す「イタリアン・エレガンス」
- 20年経った今でも古臭くないデザイン
結果として、GranSportはコレクターにとって理想的な「イタリアGT入門車」となっています。
まとめ:なぜGranSportなのか
GranSportは、次のような特徴を持つGTカーです。
- エレガントさとアグレッシブさを兼ね備えたデザイン
- フェラーリ譲りの高回転型V8エンジン
- ピュアなアナログ感覚を残すメカニズム
- 稀少性とクラシックとしての将来性
「モダン」でもあり「クラシック」でもあるこの車は、まさに若きクラシック=ヤングタイマーとして、今後さらに価値を高めていくものだとレポートでは評価している。
筆者とってもGranSportは、自分のSpyder90Anniversaryと性能的にほぼ同等であるので、自分のマセラティが評価されていると思って間違いない。現代の完全デジタル制御車にはない「手間と愛情」を必要とするGTであり、マセラティが再び世界にその存在感を示した象徴的な一台いえる。最後にでは360ModenaとGranSportの決定的な差異はなんであるか、皆さんご存じの通り、それはリセールヴァリューの違いだ。日本国内の中古車市場でも360Modenaの中古価格の3分の1しかないのがGranSportの実態なのだ。