1. バーリで見た“タクシーらしからぬタクシー”
イタリア南部、プーリア州の港町バーリ。
空港に降り立つと、ズラッと並んだタクシーが出迎えてくれます。
白いルノーやダチア、あるいはプリウスが幅を利かせているのだが。。。
ところが最近、その中に妙に色気のある一台が紛れ込んでいると話題に。
それが――マセラティ・ギブリ。
初めて見た人は「え、これタクシー!?」と二度見すること間違いなし。
筆者も写真を見たときは目を疑いました。
2. 運転手は41歳、夢を乗せたマセラティ
この話題の仕掛け人は、**ニコラ・アンドリサーニ(Nicola Andrisani)**さん、41歳。
これまで普通のメルセデスでタクシーをやっていたそうですが、
「どうせなら、誰もやっていないことをしてみたい!」
という思いで一念発起。
そして選んだ相棒が、まさかのマセラティ・ギブリ。
購入したのは中古車で、走行距離は5万kmほど。
元はグレーだった車体を、タクシー規定に合わせて白に塗り替えたとのこと。(イタリアではタクシーは白と決まっている)
しかもニコラさん、これで通常料金と同じ運賃で営業しているんです。
追加料金ゼロ、これはすごい。
観光客が空港でタクシーを呼んで、たまたまギブリが来たら…テンション上がりますよね。
3. ギブリをタクシーにするまでの苦労
でも、そこまで簡単に「高級車をタクシーに」なんてできません。
実際には、結構な苦労があったそうです。
- 購入費用:
新車だと1,200万円クラス。
さすがに新品は無理なので、手頃な中古を探して購入。 - タクシー仕様への改造:
色は白に再塗装、タクシー表示灯の設置など、規制をクリアするための手続きが山ほど。 - 維持費との戦い:
ディーゼルとはいえ3.0L、燃費は街乗りだとリッター10km前後。
保険料や部品代も、普通のタクシーとは桁が違う…。
それでもニコラさんは、
「これは投資だよ。目立てばお客さんも増えるし、バーリの名物になれば最高だろ?」
と笑顔で語っています。
うーん、かっこいい。まさに“情熱イタリア人”ですね。
4. 乗客の反応と街のざわめき
街の人々も、最初は半信半疑だったとか。
- 「これ、本当にタクシー?」
- 「追加料金いくら?」
- 「一度でいいから乗ってみたい!」
そんな声がSNSで一気に拡散し、今では観光客にとっても話題の的。
現地メディアも次々と取材に訪れ、バーリのちょっとした観光資源になりつつあります。
ある新聞はこう表現しました。
「普通のタクシーを期待していたら、やってきたのはマセラティだった。
これはまるで映画のワンシーンだ。」
確かに、ローマやミラノならまだしも、南イタリアの港町でマセラティがタクシーとして走っているなんて…想像しただけでワクワクします。
5. 高級車タクシーはビジネスとしてアリ?
ここで少し冷静に考えてみましょう。
「高級車タクシー」には夢がありますが、ビジネスとしてはどうでしょう?
メリット
- 話題性抜群 → 広告効果は計り知れない。
- 乗客の満足度UP → 「また乗りたい!」リピート客が期待できる。
- 街の新たな顔として観光資源になる。
- ディーゼルのギブリとはいえ、アクセルを踏めば紛れもなくマセラティなので、どんなお客さんを乗せていようが、通常のタクシーより速く走ってしまうはず。運転手は常にスポーツモードで運転したい気持ちなる。
課題
- 維持費が高い → 採算を取るのが難しい。
- 整備や修理に時間がかかる。
- 他のタクシー運転手との“嫉妬問題”もありそう(笑)。
- 運転手は常にスポーツモードで運転したい気持ちなるが、燃費は更に悪化する。
現状では、「ニコラさんだからこそ成り立つ挑戦」と言えそうです。
6. ギブリというクルマの魅力
せっかくなので、マセラティ・ギブリ自体についても触れておきましょう。
- エンジン:3.0L V6ディーゼル
- 最高出力:275馬力
- 0-100km/h加速:約6.3秒
- 最高速度:250km/h
空港から市内までの10分間が、VIP送迎に変わる。これは、ただの移動じゃなくて「体験」そのものです。普通のタクシーでは絶対に味わえない時間ですよね。空港からバーリの旧市街地までは、自動車専用道路や準高速道路が張り巡らされている。よってギブリディーゼルにとって、もってこいのシチュエーションである。実は筆者もかつてギブリ・ディーゼルを所有していた、ディーゼルかよと侮ってはいけない、高速走行はお手の物のなので、快適により速く目的地に着けるのだ。
7. 結論:浪漫か暴挙か、それとも新しい未来か
ギブリをタクシーに使う――これは普通なら「無謀だ!」と笑われそうです。
でも、バーリの街角で今日もニコラさんはハンドルを握り、観光客を夢のひとときへと連れていきます。
空港でタクシーを待つあなたの前に、
フィアットか、プジョーか、そして…マセラティか。
もしマセラティが止まったら――
迷わず「乗ります!」と言ってしまうんじゃないでしょうか。
浪漫か暴挙か、それは乗ってみた人だけがわかるのかもしれません。