ランチアがついに「HF」と「Integrale」の名を現代に甦らせた。その名は―― Lancia Ypsilon HF Integrale Rally2。
かつて世界ラリー選手権(WRC)を席巻した“王朝”ランチアの伝説が、電動化時代の足音が迫る今、再び火を吹こうとしている。
黄金期の遺伝子:「Integrale」という響き
「Integrale(インテグラーレ)」とは、1980〜90年代にランチア・デルタHFが誇った名の象徴だ。
四輪駆動(integrale=全輪駆動)を意味するその語は、WRCでの圧倒的な勝利とともに、イタリアの自動車文化に深く刻まれた。ランチアはこの言葉を単なる技術表現としてではなく、勝利の証としてブランドの心臓部に置いてきた。だが、時は流れ、ブランドは長く沈黙の時期を迎える。唯一の量販車種「Ypsilon」が細々と販売を続ける中、ランチアは再び“熱”を取り戻す機をうかがっていた。
Ypsilon HF Integrale:再生の狼煙
2025年、Stellantisグループ傘下のランチアは、ついに新たな“HF計画”を発表。その中心となるのが Ypsilon HF Integrale Rally2 だ。公式リリースによると、このマシンはFIA Rally2規格で設計され、最大出力は280 hp。電動化を一部に取り入れたハイブリッド・プラットフォームを採用し、2026年シーズンからの本格参戦を目指している。(出典: Stellantis Media公式発表)単に名前を復活させるだけでなく、ラリー現場に戻ってくるというのが今回の重要なポイントだ。「Integrale」は今度こそ、過去の記憶ではなく、現在進行形の競技車として再誕している。
イタリアが湧いた:国内メディアの反応
イタリアの自動車専門誌 Quattroruote や AutoMoto.it は、このニュースをトップで報じた。
特にモデナやトリノのファン層は、「HF」バッジの再登場に熱狂。SNS上では、「Finalmente!(ついに!)」というコメントが相次ぎ、“Lancia Corse”の復活を象徴する出来事として受け止められている。同時に、一般市販モデルとしての「Ypsilon HF Line」も発表され、これまでの上品な都会的イメージから一歩踏み出し、**スポーティかつ情熱的な“走りのランチア”**への転換が鮮明になった。
モータースポーツ復帰の意味
Stellantisグループ内では、Abarth・Alfa Romeo・Lancia という3つのブランドが明確に住み分けを始めている。その中でLanciaは、「美・知性・情熱」を軸にしたデザイン系スポーツブランドとして再定義されつつある。HF Integraleの復活は、その理念を最も象徴する動きだ。特に、これが**Rally2カテゴリー(旧R5)**で登場することは、単なるモータースポーツ復帰ではなく、“クラブマン〜国際戦”まで視野に入れた実戦的な布陣を意味する。イタリア国内のプライベートチームが再び「Lancia HF」で走る日も近いだろう。