電動SUV「Grecale Folgore」をはじめとするマセラティのエントリーモデルがモデルイヤー2026版を発表。
日本では未発売のフォルゴーレシリーズですが、グレカーレ・フォルゴーレMY26の最大の革新は“AWD-Disconnect”という全輪駆動を物理的に切り離す新機構だ。これにより航続距離は 最大580 km に到達するという。
新旧AWDシステムの違い
✅ 旧システム(MY24以前)
- Grecale Folgore(現行EV版)では、前後モーターによる常時全輪駆動(AWD)が標準。
- トラクション優先で全輪を駆動するが、乗り越え性能と保安性に秀でる反面、エネルギー効率・航続距離にはやや不利。
- 駆動切り替えはソフト制御(モーター制御/電子制御)レベルで、物理的に前輪軸を切り離す構造ではなかった。
🔧 新システム “AWD-Disconnect” (MY26)
- MY26版では「前輪軸(半軸/セミアクスル)を物理的にモーター・ハブから切り離す」機構を導入。
- 切り離しは約「0.5秒=500ミリ秒」で完了。
- 不要時は後輪駆動(RWD)モードに自動移行。AWD使用時だけ全輪駆動に復帰。
- この切り替えにより、駆動系の無駄摩擦・駆動ロスを削減、エネルギー効率を最適化。
- MSや電子制御だけでなく、「前輪駆動系が物理的に“切れる”」構造がポイント。
📊 比較まとめ
| 項目 | 旧AWD | AWD-Disconnect (MY26) | 
|---|---|---|
| 駆動方式 | 常時AWD | 必要時のみAWD/通常はRWD | 
| 転換タイム | 電子切り替え(多少遅延) | 約0.5秒で物理切断/復帰 | 
| 駆動効率 | 駆動輪・電子損失あり | 駆動系の機械切断によりロス低減 | 
| 航続距離 | 既存レンジ | 最大 580 km を目指す。 | 
“AWD-Disconnect” の仕組み
- 通常走行時:前輪モーター・ハブが切断され、駆動力は後輪モーターに集約 → 後輪駆動モード。
- 駆動必要時/悪路時:センサーが前輪側トルク・車両挙動を判断 → 前輪半軸を即接続して全輪駆動へ。
- 切断・接続プロセスは500ミリ秒。シームレスかつドライバー操作不要。
- 制御は数千のセンサー+アルゴリズムがリアルタイム分析:前輪負荷、ブレーキ温度、路面勾配、モード選択など多数。
なぜこの構造が“航続距離580 km”につながるのか
- 駆動系のムダ:旧AWDでは常に全輪が駆動ネットワークに入るため内部抵抗・摩擦・電子制御損失が発生。
- 新システムでは前輪駆動系を“切断”するため、その損失を大幅に低減。
- バッテリー電力を駆動だけでなく、冷却・制御系にも余裕を持たせるため、実用レンジが最大化。Automoto.it 紙では「最大580 km」と記載。
- 更に、バッテリーの“プリコンディショニング機能”やナビ連携のEVルーティングも強化され、充電時・走行時ともに効率を追求。
Grecale Folgore MY26が示すのは、ただ「航続距離が延びた」ではなく、「駆動構造そのものを見直して効率化を果たした」こと。
“AWD常時駆動”という従来の常識を一歩超え、必要時にだけAWDに切り替えるという技術的メッセージは、EV時代のプレミアムSUVにとって新しい指標となるだろう。
Maseratiはこのモデルで、「一流ブランド=走りの性能+先端効率技術」を両立する姿を鮮明にしている。
マセラティ Grecale MY26──4つの個性が描く「Everyday Exceptional」の進化
「Grecale(グレカーレ)」が、モデルイヤー2026=MY26として大幅にアップデートされ、電動SUV「Folgore」だけでなく、ガソリン/ハイブリッド/ハイパフォーマンス仕様の全ラインが刷新さる。この変化のキーワードは──「Everyday Exceptional(毎日が特別になる)」。マセラティはこの理念を、SUVレンジのすべてのモデルに再定義してきた。
Grecale GT / Modena:マイルドハイブリッドの洗練
MY26では、Folgore以外のグレードも刷新されている。
「マセラティはSUV『Grecale』のレンジを拡張し、エンジン、内装、外装を更新して顧客の多様なニーズに応える」
🔹 Grecale GT
- 2.0 L 直列4気筒+48 V マイルドハイブリッド
- 約300 PSを発生。
- MY26では燃費効率と静粛性が改善され、都市走行向けの滑らかなトルク特性に。
🔹 Grecale Modena
- 同じく2.0 L MHEVだが、330 PS仕様にアップチューン。
- サスペンション、ブレーキ、ステアリング制御がスポーティ寄りに最適化。
- 内装ではナチュラルレザーやアルカンターラなどを組み合わせた**新デザインテーマ「Modena Essenza」**を採用。
- Folgore譲りの新インフォテインメント(Androidベース)と更新UIを搭載。
これらのハイブリッド系2モデルは、**「日常を上質にするマセラティ」**の中核を担う存在だ。
以前ラインナップにあったGrecaleGT250(250PS仕様)はなくなった。
🏎 Grecale Trofeo:内燃の誇りを継ぐ
内燃機関の時代が終わりに向かうなかでも、マセラティはその魂を手放さない。
トップグレード「Grecale Trofeo」は、依然として**3.0 L V6 Nettunoエンジン(530 PS)**を搭載。モータースポーツ由来のプレチャンバー燃焼技術が磨かれ、MY26ではレスポンスと排出効率がさらに向上。また、Folgoreの電動技術から得た冷却システム改良をガソリンモデルにも応用し、サーキット走行でも安定した熱管理性能を確保している。
🌍 マセラティが描く“多様性の美学”
マセラティは、Grecale MY26で**「すべてのドライバーにマセラティを」**という哲学を具体化した。電動・ハイブリッド・ガソリン──それぞれの持ち味を生かしつつ、ブランドの根幹である「官能性」と「デザイン」を失わない。
SUVという日常的カテゴリーの中で、「技術と情熱を共存させる」マセラティ流の多様性がここにある。
Photo © Maserati S.p.A. / media.maserati.com)

