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Maserati GranTurismo「トリノ産」と「モデナ産」は何が違うのか?

歴史・工程・哲学まで分解する“決定版”比較レポート

2025年、マセラティは静かに、しかし決定的な一歩を踏み出した。
GranTurismo / GranCabrio の生産ラインを、トリノ・ミラフィオーリから本来の故郷モデナへ戻したのである。

表面上、この移管は「工場の変更」に見えるかもしれない。
だが、実際には──
クルマに宿る“物語の層”が1枚、深く重なった
そう言うべき変化だ。

本稿では、同じ GranTurismo でありながら
**「トリノ産」「モデナ産」**では何が違うのか。
その構造的、文化的、そして象徴的な違いを、一次情報を基に整理していく。

1. 生産地の違いは「モデルの前半と後半」を分ける境界線

■ トリノ産(〜2025年中頃)

■ モデナ産(2025年末〜)

トリノ産は“ステランティス改革下の新生GT”。
モデナ産は“オペラ座のような工房で生まれる、マセラティらしいGT”。

こう理解するのが最も正確だ。


2. モデナ新ラインの特徴は「工房 × テクノロジー」

2025年の移管発表と同時に、モデナ新ラインの仕様が公開された。

これは明確に、
「工場」ではなく“工房”である。
大量生産型のトリノとは、生産哲学が根本から違っている。


3. 真の違い:Fuoriserie と「Meccanica Lirica」パッケージ

このワンオフモデルで示された要素は、モデナ産GTを語る上で欠かせない。

モデナ回帰の象徴が、2025年11月に公開された
Meccanica Lirica(メッカニカ・リリカ)

■ 特徴

Sky TG24 の現地レポートで確認されているように、
この「Creata a Modena」バッジは
“モデナ産”のアイデンティティを物理的に示す最初の記号である。

さらに、ドイツ紙のレポートでは:

この Meccanica Lirica の意匠要素は、今後パッケージオプションとして展開される

と報じられている。

これはすなわち:

▶ トリノ産 GranTurismo

= Meccanica Lirica の世界観は存在しないロット

▶ モデナ産 GranTurismo

= Lirica パック対応 + “産地バッジ”が物語に組み込まれるロット

という、極めて象徴的な違いである。


4. 技術仕様は基本共通。しかし「作られ方」は別物

エンジン(Nettuno V6)
Folgore の三モーターBEV
シャシー(Progetto 189)

これらのスペック上の差は現時点で公式には存在しない

しかし、
ラインの精度(計測・フィニッシュ工程)、パーソナライゼーションの統合、スタッフ数の最適化が違えば、
同じレシピでも仕上がりが変わるのは自然だ。

マセラティ自身は
「モデナはブランドの心臓部(cuore pulsante)」
と述べており、
これは“品質の違い”というより、“文化的価値の違い”を示す言葉だ。

5. ブログ読者のための「見分けポイント」

▶ トリノ産(〜2025)

▶ モデナ産(2025年末〜)


6. 結論

GranTurismo は「作られた場所」で別の物語を持つ

スペックで比較すれば、2つの GranTurismo はほぼ同じだ。
しかし、そこに込められた
技術者の手数、工程の密度、そして“モデナという文化そのもの”
は、まったく異なる。トリノ産は、
ステランティス再編下で誕生した新生GTの“第1章”。

モデナ産は、
オペラ座の光を浴びて復活した
“本来のマセラティ”としての GranTurismo の第2章
と言える。

クルマを“数字で読み、物語で味わう”読者なら、
この違いはきっと心を掴むはずだ。

出典:Maserati / Stellantis Media Site

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