1966-2026:マセラティ「ギブリ」と「メキシコ」──黄金の60年を彩るエピソードと美学
2026年、世界中のコレクターやエンスージアストの視線は、モデナが生んだ2つの傑作へと注がれています。誕生から60年。今なお「史上最も美しい」と称賛される初代ギブリと、知る人ぞ知る高貴なクーペ**「メキシコ」**。
この2台がなぜこれほどまでに特別なのか、その裏側に隠されたエピソードとともに紐解きます。
1. 初代ギブリ(Ghibli):世界中のセレブリティを虜にした「動く芸術品」
1966年のデビュー当時、ギブリは単なるスポーツカーではなく、富と成功、そして卓越したセンスの象徴でした。
• 伝説のオーナーたち:
ギブリの美しさに魅了されたのは、銀幕のスターやトップアーティストたちでした。
• サミー・デイヴィスJr.: 稀代のエンターテイナーである彼は、ギブリをこよなく愛し、プライベートでもハンドルを握りました。
• ジャン=ポール・ベルモンド: フランスの名優もまた、その鋭いスタイリングに惚れ込んだ一人です。
• ヘンリー・フォード2世: 驚くべきことに、フォードの首領ですらマセラティの造形美を認め、最初の1台を自ら購入したという逸話が残っています。
• 「SS」というさらなる高み:
1969年には、排気量を4.9Lに拡大した**「ギブリSS」**が登場。最高速度は280km/hに達し、当時「世界最速の市販車」の座を争いました。
• こだわりのカラーリング:
当時の人気色は、深みのある赤**「Rosso Rubino(ロッソ・ルビーノ)」や、地中海の空を思わせる淡いメタリックブルー「Celeste Chiaro(セレスト・キアーロ)」**。2026年のヘリテージ・イベントでも、これらのオリジナルカラーを纏った個体はひときわ輝きを放つでしょう。
2. メキシコ(Mexico):大統領へのオマージュと「1/1」の起源
メキシコは、ギブリの陰に隠れがちですが、実はマセラティの「ビスポーク(特注)」精神のルーツとも言えるモデルです。
• 車名の真実:
1965年のメキシコGPで、マセラティ製エンジンを積んだクーパーが優勝。その直後、偶然にも修理のためにモデナの工場を訪れていたメキシコの大統領アドルフ・ロペス・マテオスが、製作中のプロトタイプを気に入り、それが「メキシコ」という車名の由来になったと言われています。
• 「5000GT」の魂を継承:
メキシコは、かつての超高級車「5000GT」のシャシーを短縮して作られました。つまり、中身は世界中の王族や大富豪が特注したハイエンドモデルの血を引いているのです。
• 静かなる咆哮:
4.2Lおよび4.7LのV8エンジンは、荒々しいパワーではなく、シルクのように滑らかな加速を提供しました。本革とウッドパネルに囲まれた室内は、まさに「移動する極上のサロン」でした。
3. 2026年、60周年のハイライト・イベント(展望)
この記念すべき年に、イタリア本国では以下のような特別な催しが期待されています。
• コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ:
5月にコモ湖畔で開催される世界最高峰のコンクールでは、特別展示クラスとして「The 1966 Icons」が設けられる可能性が高まっています。
• モデナ・パレード:
マセラティの本拠地モデナでは、世界中から集まった60台以上のギブリとメキシコが、工場の門から旧市街へとパレードする壮観な景色が見られるでしょう。
結び:1966年の魂を、今こそ語り継ぐ
2026年という節目に私たちが再確認すべきなのは、マセラティというブランドが常に**「情熱を形にする天才」**であったということです。
機能性を突き詰めた先に生まれたギブリの鋭さ。
勝利の記憶をラグジュアリーに昇華させたメキシコの気品。
60年前のモデナで、エンジニアと職人たちが心血を注いだこの2台は、時代が変わっても「何が真に美しいのか」を私たちに問いかけ続けています。

