イタリア北部で旧車通行規制が強化 ― クラシックカー文化に新たな試練

2025年10月1日、イタリア北部のロンバルディア州・ピエモンテ州・エミリア=ロマーニャ州で、大気汚染対策(“Misure Antismog”)が正式に強化された。

これにより、一定年式以前のガソリン車やディーゼル車は、平日の昼間に市街地を走行できなくなった。クラシックカー文化の盛んな地域での規制強化は、愛好家やイベント主催者に大きな影響を与えている。

対象地域と内容

新たな通行制限は、主に以下の都市を中心に実施されている。

  • ロンバルディア州:ミラノ、ブレシア、ベルガモ、モンツァ など
  • ピエモンテ州:トリノおよび周辺自治体
  • エミリア=ロマーニャ州:ボローニャ、モデナ、レッジョ・エミリアなど
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州政府の通達によると、平日(おおむね8:30〜18:30)における走行禁止対象は次の通り。

車種燃料タイプ適用基準対象年式の目安
乗用車ガソリンEuro 0〜22000年頃まで
乗用車ディーゼルEuro 0〜42010年頃まで
二輪車2ストロークエンジンEuro 0〜12000年代前半まで

いずれも、主要都市の中心部および周辺都市圏で走行禁止となる。
違反時には自治体ごとに罰金が科される。

クラシックカーは“原則対象外”だが地域差あり

クラシックカーに関しては、
ASI(Automotoclub Storico Italiano)による「Targa Oro」認定車両や、
少量走行・イベント目的の登録車については、一部例外が認められている。

ただし、適用の有無は自治体ごとに異なり、統一基準は存在しない。
ミラノ市やトリノ市では、Targa Oro登録車にも制限が及ぶ時間帯があり、
週末イベントでさえも中心部の通行許可が下りないケースが出ている。

このため、旧車イベントの一部が郊外へ移転するなど、実務的な混乱が起きている。
(参考:[ModenaToday, “Eventi storici auto spostati fuori centro per nuove norme”, 2025年10月2日])

政府の意図と批判の声

州政府は今回の措置を「都市部の大気汚染(PM10)削減」を目的と説明している。
実際、ミラノやトリノでは冬季に基準値を超えるPM10濃度が観測されており、
気候政策の一環として「行動変容」を促す狙いもある。

一方で、自動車業界団体や愛好家団体からは、以下のような懸念が上がっている。

  • 地方住民の移動手段を奪う恐れ(特に旧型車を使う中小所得層)
  • 観光・イベント産業への影響(クラシックカー展示会やヒストリックラリーの減少)
  • 文化的遺産の軽視(モデナやトリノといった“自動車の聖地”での締め出し)

Automotoclub Storico Italiano(ASI)は声明でこう述べている。

“自動車遺産は文化遺産と同義であり、
単なる交通手段や排出源として扱うべきではない。”
— ASI公式発表, 2025年9月

今後の動き

イタリア環境・インフラ省は2026年に向けて
「eco-bonus 2026」制度を準備中で、
低所得層向けに中古ハイブリッド車や低排出ガス車への補助金を検討している。
また、一部の州では、クラシックカーを週末限定で走行可能に戻す修正案も協議中だ。

この流れには正直、如何なものかと。。。古い車を排出源とだけ見る視点は理解できますが、
イタリアの街を“生きた博物館”にしているのは、まさにそれらの車たちであるのだ。

数十年を経てなお動くエンジンには、技術と情熱と記憶が宿っています。
環境政策の目的は尊重しますが、文化と共存する形での解決策――たとえば、
「限定走行枠」「イベント時の許可制度」「登録車特例」などの制度的調整が必要ではないでしょうか

自動車文化の発祥地であるイタリアだからこそ、
「排出ゼロ」と「情熱ゼロ」を混同してはならないと感じます

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