イタリア・ミラノで開催されたMilano AutoClassica 2025。クラシックカーの祭典でありながら、時に“未来へのビジョン”を提示するステージでもあるこのイベントで、ひときわ強烈な存在感を放っていたのが、マセラティが出展した**MC20 Cielo「Opera d’Arte」**だ。


これは通常の限定車ですらない。
世界に1台だけのワンオフモデル。
その存在は、まさに芸術作品の域に達している。
■ “アートを纏うスーパーカー”という新たな表現
「Opera d’Arte(オペラ・ダルテ)」──直訳すれば“芸術作品”。
名前に偽りなしのディテールが、この一台には凝縮されている。
このモデルは、マセラティのオーダーメイド部門である**Fuoriserie(フオリセリエ)**によって製作されたもの。2024年に特別顧客向けに制作されたが、一般の前に姿を現すのは極めて稀だ。
● 抽象絵画をモチーフにしたボディアート
ボディ全体には、イタリア近代美術の文脈で語られる**抽象芸術(Astrattismo)**から着想を得た筆致が大胆に走る。
直線でも曲線でもない“動きの余韻”のようなラインが、MC20 Cielo の低く鋭いフォルムに重なり、クラシックでもあり未来的でもある独特のリズムを生み出している。
● 15色を組み合わせた“職人の絵筆”
このアートペイントは、
15色の特注カラーを手作業で重ねるという気の遠くなるプロセスによって仕上げられた。
塗装というより、もはや“巨大なキャンバスに描かれた絵画”。
しかもそのキャンバスは、時速320kmを超えるスーパーカーだ。


● スーパーカーの骨格に「魂の温度」を
MC20 Cielo が持つ
- カーボンモノコック
- 電動開閉式ガラスルーフ
- 630PSを誇るNettuno V6
これら“冷静なハイテク”の上に、“人の手の温度”を重ねるという発想。
イタリアンブランドならではのテクノロジーと職人芸の幸福な融合がここにはある。
■ なぜクラシックカーの祭典にワンオフMC20を?
Milano AutoClassica といえば、往年のレーシングカーや名車が主役のイベントだ。
そんな場所に、最新のワンオフMC20 Cieloを並べたことには明確な意図がある。
● MC20から“MCPURA時代”への架け橋
マセラティは公式声明の中で、MC20 Cielo「Opera d’Arte」をこう位置付けている。
MC20ファミリーの象徴であり、その自然な進化として新世代スーパースポーツ「MCPURA」が誕生した。
つまりこの展示は、クラシックカーと現代アートと最新スーパーカーをひとつの物語でつなぎながら、
**「これがマセラティの美学だ」**と世界に提示する演出でもあったのだ。


■ 観客が感じた“オーラ”
実車を前にした観客の多くが口にした言葉は、意外にも「美しい」だった。
スーパーカーというと“速さ”“迫力”“価格”が語られがちだが、このワンオフは明らかに違う。
- 絵画としての存在感
- 彫刻としての立体美
- スーパーカーとしての動的フォルム
それらが矛盾なく同居しており、まるで美術館の展示物がそのまま走り出すような、“静”と“動”の緊張感が漂っていた。


■ マセラティが示したメッセージ
ワンオフモデル「Opera d’Arte」が、イタリアのクラシックカーイベントで果たした役割は明確だ。
- ブランドの原点:イタリア芸術のDNA
- 現在:MC20が築いたハイパフォーマンス時代
- 未来:MCPURAへ進むデザインと哲学の継承
マセラティは、ただ速い車を作るだけのブランドではない。
“車そのものをアートに昇華させる”唯一の存在であることを再び示した。
■ おわりに
Milano AutoClassica 2025 におけるマセラティの主役は、最新モデルではなく、**唯一無二の芸術作品「Opera d’Arte」**だった。
このワンオフMC20 Cieloは、
スーパーカーの世界において“ファッションでも、工業製品でもない、第三の価値”を提示したと言える。
モータースポーツ、デザイン、そして芸術。
そのすべてを融合したマセラティの世界観は、今後登場するMCPURAにも確実に受け継がれていくはずだ。


