第1回アナンタラ・コンコルソは不変の『ラ・ドルチェ・ヴィータ』と『ローマの青空にV12の咆哮』。



昨年の4月に開催される予定だったアナンタラ・コンコルソ・ローマは直前になって、パパの葬儀の為にドタキャンになったイベントである。1年越しの待望のコンコルソだ。筆者は昨年は都合が合わなかったので、今年開催は千歳一隅となったわけだ。残念ながら、宿泊付き入場券、ディナーパーティ付き入場券等は既に完売である。残りは一般入場券のみである。日本では4月11日12日奈良のコンコルソとオートモビルカウンシルがあり、筆者は奈良に行かずオートモビルカウンシルを優先し、終わり次第イタリア・ローマに飛ぶ。観光も兼ねたアナンタラ・ローマ・コンコルソに見学に行くのは理にかなった選択肢である。何故なら「借物」か「本物」か:歴史的背景の純度で言えば、奈良のイベントは「東洋の古都と西洋の名車の融合」という素晴らしい演出であるが、あくまで「遠く離れた極東の地への招待状」である。対してローマは、「これらが生み出され、駆け抜けた母国そのもの」。石畳の質感、空気の湿り気、そして背後に控えるボルゲーゼ公園の歴史——。フェラーリ 250 LMがローマの太陽の下で放つオーラは、他国のどのような舞台でも再現不可能な「文脈(コンテクスト)」を纏っています。
【保存版】Anantara Concorso Roma 2026 参加予定車両(ハイライト)
今回のコンクールの目玉は、単なる美しさだけでなく「イタリアのレース史」を象徴する個体が揃っていることです。
1. フェラーリ:ル・マン伝説の再会
• Ferrari 250 LM (1964年): 1965年のル・マン24時間で総合優勝を果たした個体そのもの、あるいは同型車が展示される予定です。ミッドシップ・フェラーリの原点として、今回の主役級の一台です。
1965年のル・マン24時間で総合優勝を飾った伝説の個体が展示されます。これはN.A.R.T.(北米レーシングチーム)がエントリーしたもので、フェラーリに6年連続の勝利をもたらした最後のモデルです。プライベーターチームによるル・マン総合優勝という、今なお破られていない記録の象徴です。


• Ferrari 275 GTB/4 (1967年): 完璧なコンディションの「N.A.R.T.スパイダー」仕様がエントリーされているとの噂があります。
• Ferrari 275 P Carrozzeria Fantuzzi (1963 年):もともと250Pとして誕生した個体が、ル・マンでののシャシーに差し替えられ、そのまま1963年のル・マンでイタリア人コンビによる初優勝を達成。翌年には275Pへとアップグレードされ、再び優勝。**「同一シャシーで2年連続ル・マンを制した唯一の車」**という、凄まじい歴史を持つ個体です。


2. アルファロメオ:戦前の栄光と戦後の色気
• Alfa Romeo 8C 2900B Lungo Berlinetta (1938年): 「世界で最も美しい車」と称されるこのモデルが、イタリア国内のプライベートコレクションから久々に姿を現します。
• Alfa Romeo 33 Stradale (1967年): 2026年は新型33ストラダーレのデリバリー時期とも重なるため、新旧が並ぶ特別な展示が期待されています。
3. ランチア:ラリーの皇帝たちの休息
・Lancia Astura cabriolet Carrozzeria Boneschi (1938年):〜戦前イタリアン・エレガンスの頂点、ボネスキの彫刻〜「アストゥーラ」という気高きプラットフォーム。ランチア・アストゥーラ(1931–1939年)は、当時のランチアにおけるフラッグシップであり、世界中の王侯貴族や富豪が競ってシャシーを買い求めた「貴婦人」です。特筆すべきは、ナローV型8気筒(V8)エンジンを搭載している点。非常にコンパクトながら滑らかで力強い走りは、当時のライバル(アルファロメオやロールス・ロイス)とは一線を画す、ランチア特有の「知的な洗練」を象徴していました。
カロッツェリア・ボネスキ(Boneschi)の魔法。ミラノに拠点を置いたボネスキは、派手さよりも「抑制された美しさ」と「完璧な比率」を重んじた工房です。
凛とした佇まい: 他の工房(ピニンファリーナやトゥーリング)が流線型を追及する一方で、ボネスキのアストゥーラは、どこか建築的で直線的な気品を漂わせます。
細部への執着: クロームパーツの使い方や、幌を畳んだ際の完璧なフラットライン。これらは「Dolce Vita」というよりは、戦前のミラノの「貴族的な厳格さ」を感じさせます。
歴史的背景:ムッソリーニも愛した名車:アストゥーラはイタリア政府の公用車としても採用されていましたが、ボネスキ製のカブリオレはその中でも「特別な一着」として扱われました。現存数は極めて少なく、海外のコンクール(ペブルビーチなど)でも最高賞を争うレベルの、世界的な至宝です。


• Lancia Flaminia Sport Carrozzeria Zagato (1959年):マストロヤンニが愛し、ザガートが削り出した「走る彫刻」
マルチェロ・マストロヤンニの「相棒」マストロヤンニは私生活でも熱狂的なランチア・ファン(ランチスタ)として知られ、実際にフラミニア・スポルトを所有していました。映画『甘い生活』のイメージがあまりに強烈ですが、彼自身がハンドルを握り、ローマの街を流していたのはこのザガート製のフラミニアでした。彼のような「力まない色気」を持つ男性にこそ似合う、知的なGTカーの頂点です。
ザガートの魔法「ダブル・バブル」と「低重心」フラミニア・スポルトは、ザガートの代名詞がすべて詰まっています。
空力と造形: 低く構えたフロントマスクから、ザガート特有の**「ダブル・バブル」ルーフ**、そして切り落とされたようなリアエンド。
軽快なメカニズム: アルミ製ボディに、世界初のV6エンジンをさらに磨き上げた2.5L(または2.8L)ユニットを搭載。マセラティやフェラーリのV12とは異なる、乾いた精密なサウンドが特徴です。
2026年、ローマで見る意味:この車が並ぶことで、今回のコンクールは単なる「車の展示」から「ローマの文化史」へと昇華します。
映画のセットが現実に: ボルゲーゼ公園の並木道にフラミニア・スポルトが停まっている光景は、2026年の今、タイムスリップしたかのような錯覚を呼び起こします。


• Lancia Aurelia B24S Convertible Carrozeria Pininfarina) (1955年): イタリア映画『追い越し(Il Sorpasso)』の記憶を呼び覚ます、ローマの風景に最も似合う一台。
4. マセラティ: trident(三叉矛)の咆哮
• Maserati A6GCS/53 Berlinetta (1954年): ピニンファリーナによる傑作。このコンクールには、非常に珍しいオリジナルのレーシング・カラーを纏った個体が登場すると言われています。マセラティ110周年(2024年)を経て、ブランドの「美の極致」として選出。当時わずか4台しか製作されなかったピニンファリーナ製ベルリネッタボディで、エンジンはツインカム化された170馬力の直6を搭載。今回の展示では、その流麗なボディラインをローマの太陽の下で拝むことができます。
• Maserati A6G/54 berlinetta Carrozzeria Zagato(1956年): わずか20台の「超」希少性。A6G/54は、マセラティの名車「A6GCS」のレーシング・メカニズムを、公道走行が可能なGT(グランツーリスモ)へと昇華させたモデルです。総生産台数約60台のうち、ザガート(Carrozzeria Zagato)がボディを手掛けたのはわずか20台。その多くが、軽量なアルミニウムボディを纏った、レース参戦を目的としたオーナーたちのための「戦闘服」でした。「ダブル・バブル」に込められた美学。ザガートの代名詞である**「ダブル・バブル」ルーフ**(ヘルメットを被ったドライバーの頭上を確保しつつ、空力を最適化するための膨らみ)を採用した個体も存在します。今回のエントリー車両がもしこのルーフを持つ個体であれば、その彫刻的な美しさは、ボルゲーゼ公園の歴史的建造物の中でも際立つ存在感を放つでしょう。
• Maserati Tipo 61 “Birdcage” (1960年): 複雑なパイプフレームが透けて見える「バードゲージ」の展示も、メカニズム好きには堪りません。
5. ランボルギーニ:ミウラの祝祭
• Lamborghini Miura P400 SV (1971年): 今回は特に「ワンオフのボディカラー」を持つ個体が選出されており、ランボルギーニの色彩感覚がローマの太陽に映えること間違いありません。
ここがレア情報!
このコンクールには、**「Dolce Vita(甘い生活)」**という特別カテゴリーが設けられています。


ここでは、1950〜60年代に映画スターやセレブリティが実際にローマで乗り回していた、カスタマイズ済みのフィアット500(ジョリーなど)や、フェラーリのワンオフモデルが多数集められるとのこと。
「ヴィラ・デステが『静寂と気品』なら、ローマ・コンクールは『映画のワンシーンのような華やかさ』。
特にボルゲーゼ公園の緑の中、250LMのV12サウンドが響き渡る瞬間は、2026年の自動車界で最も贅沢な体験になるでしょう。」
