アルファロメオの中核SUV「ステルヴィオ」と「ジュリア」が、現行モデルのまま2027年まで生産継続。


一方で、次期ステルヴィオ(完全電動化モデル)は2028年へ延期されるというのだ。
複数のイタリアメディアによれば、アルファロメオのCEO ジャン=フィリップ・インパラート氏が
「Giulia と Stelvio は2027年までカッシーノ工場で継続生産される」と明言した。この延命は単なる在庫調整ではなく、明確な戦略的判断によるものだという。


理由は単純。
電動化への市場対応の遅れと、顧客が依然として内燃エンジン車を求めているという現実である。
欧州ではEV需要が鈍化しており、特にイタリア国内では充電インフラの整備が遅れ気味だ。
アルファロメオはこうした状況を踏まえ、現行ICEモデルを延命することで「市場の空白」を防ぐ構えだ。
次期ステルヴィオは2028年へ延期


本来、ステルヴィオの次期モデルは2026年登場が想定されていた。
しかし、2025年5月付の Reuters 報道によると、「開発プラットフォームと電動パワートレインの最適化作業が遅れている」とのことで、発売は2028年頃に後ろ倒しされる見通しが強まった。結果、「Stelvio Elettrica(仮称)」が当初計画より約2年遅れて登場するとになる。しかも単なるEV化ではなく、従来の“走り”を残すために**大幅な改良(再チューニング)**を実施中だという。つまり、延期は開発の停滞ではなく、アルファロメオの理想を維持するための時間稼ぎなのだ。
延命の裏にある「カッシーノ工場」の現実
現行モデル継続の決定には、地元経済の側面もある。
ラツィオ州カッシーノ工場では、約3,000人がステルヴィオ/ジュリアのラインに従事しており、
もし生産が2025年で終了していれば、多くの雇用が失われる恐れがあった。
今回の延命決定により、地域雇用は少なくとも2027年末まで維持される見込みだ。


同時に、ステランティスは「次世代EVモデルの製造ラインを同工場に導入予定」とも発表。
つまり、この延命は“最後のICE生産”と“次世代EV工場化”の橋渡し期間として機能する。
延期=後退ではなく、進化の猶予
アルファロメオが新型を急がない理由は、明確だ。
それは、ブランドの“走りの魂”を保つためである。
ステルヴィオの現行型は、FRベースのプラットフォームと優れた操縦性で高評価を得ている。
この感覚をEVで再現するには、単にモーターを積めば済む話ではない。
“If you remove the emotion, it’s no longer Alfa Romeo.”
— ジャン=フィリップ・インパラート(CEO)
電動化が避けられない未来であっても、“アルファらしい加速と音とステアリングフィール”を残すために、開発チームは再設計を余儀なくされている。延期はそのための時間——すなわち、“魂の延命”でもある。


クラシック視点で見れば、2027年まで続く現行ステルヴィオは最後の純内燃SUVアルファだ。Quadrifoglioモデルの2.9Lのフェラーリがプロデュースする V6ツインターボは、将来確実に“名機”として語り継がれるだろう。この延命によって、現行型の市場価値は長期的に安定し、後年「アナログ最後のアルファ」としてコレクターズアイテム化する可能性が高い。
電動化の波に抗う“静かな勇気”
ステルヴィオの次期型延期と現行モデル延長は、単なるスケジュール修正ではない。アルファロメオというブランドが「効率よりも情熱を優先する」姿勢を改めて示した出来事だ。EV化が進む欧州で、あえて“走りの官能”を守るその姿勢に、イタリア車ファンは少なからず胸を熱くしている。
