1956-2026|マセラティの至宝「A6G/54」が迎える70周年

マセラティの至宝「A6G/54」誕生70周年──60台の奇跡が語る、美しき闘争心

1. 1956年という「完成」の年

A6G/54は、その名の通り1954年に発表されましたが、生産が軌道に乗り、熟成を極めたのが1956年でした。

モデル名の由来: 「A6」は創業者アルフィエーリの「A」と直列6気筒を、「G」はイタリア語で鋳鉄(Ghisa)ブロックを、「54」は登場した1954年を指します。

70周年の意義: 2026年は、この「公道を走るレーシングカー」が最も輝いていた時代からちょうど70年。マセラティ・クラシケ(古典部門)にとっても、最も重要なアニバーサリーの一つとなります。

2. 「中身」は純粋なレーシング・サラブレッド

A6G/54が単なる「美しい旧車」ではない理由は、その心臓部にあります。

直列6気筒 DOHC ツインスパーク: 当時の最先端レース用エンジン「150S」の設計思想を継承。1気筒あたり2つのプラグ(ツインスパーク)を持ち、2リッターから150馬力を発生させました。

ドライサンプの採用: ボンネットを極限まで低く抑えるため、レーシングカー同様のドライサンプ方式を採用。これが、後述するカロッツェリアたちの自由な造形を可能にしました。

3. 三者三様、職人が競った「3つの顔」

わずか60台しか生産されなかったA6G/54は、その一台一台が特注(ビスポーク)でした。主要な3つのカロッツェリアの違いを比較すると、マセラティの多面性が見えてきます。

ザガート(Zagato):【20台生産】

「最もスパルタンな美」。アルミ製軽量ボディを纏い、ミッレミリアなどのレースで勝利することを目的に作られました。2026年のオークション市場では、最も高価(数億円規模)で取引されるコレクターの究極の標的です。

Photo: Octane / Maserati A6G/54 Zagato (Chassis 2155)

フルア(Frua):【約18台生産(スパイダー12台、クーペ6台)】

「最も華やかな宝石」。二色塗りのボディや複雑なクローム使いが特徴で、カンヌやパリのコンクール・デレガンツァで主役を張るための「社交界の華」でした。

アレマーノ(Allemano):【21台生産】

「最も気品あるGT」。端正なクーペボディは、後の名作3500GTの雛形とも言えるスタイル。当時の実業家や貴族が、長距離を快適に、かつ速く移動するために選んだ一台です。

4. レースの記憶:ジェントルマン・ドライバーの夢

1956年当時、A6G/54(特にザガート製)は、プライベーターたちの手によってミッレミリアコッパ・インテロイウロパタルガ・フローリオなど、名だたる公道レースに参戦しました。

「日曜日にレースで勝ち、月曜日にはその足でオフィスへ向かう」という、当時の理想的なカーライフを体現していたのです。

5. 2026年、私たちが目撃する「伝説の帰還」

誕生70周年となる2026年、世界各地で以下のようなシーンが期待されます。

ミッレミリア 2026: 70年前と同じように、イタリアの公道をA6G/54の咆哮が駆け抜ける姿。

ヘリテージの頂点: コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ等での特別展示。

現代への継承: A6G/54が持っていた「レース技術の市販車転用」という思想が、最新のMC20にどう息づいているかを語るストーリー。

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