ローマを彩るイタリアン・エレガンスの深淵ランチア:貴婦人の如き気品と、マストロヤンニの愛した「知性」ランチアの展示エリアは、イタリア自動車史における「最もエレガントな時代」を切り取ったかのようでした。
• アウレリア B24 スパイダー:
今回、多くの観衆を溜息とともに釘付けにしていたのが、このB24スパイダーです。ピニンファリーナによるパノラミック・ウインドシールド(湾曲したフロントガラス)と、一切の無駄を削ぎ落としたボディライン。それは「走る芸術品」という言葉さえ安っぽく感じるほどの完成度です。ローマの陽光がその優雅な曲面に反射する様子は、まさに至福の光景でした。


• アウレリア B20:
一方で、モータースポーツの歴史を塗り替えたB20の存在も忘れてはなりません。現代に続く「グランツーリスモ(GT)」という概念を確立したこのクーペは、端正な見た目とは裏腹に、ミッレミリアなどの過酷なレースで並み居る大排気量車を追い詰めた実力派。その控えめながらも芯の通った佇まいに、ランチアというブランドの「知的な闘争心」を感じずにはいられませんでした。

• フラミニア・スポルト・ザガート:
ザガート伝統のダブル・バブル・ルーフを持つフラミニア・スポルト・ザガートは市販モデルとコンペティションモデルが展示された。
映画『甘い生活』のマルチェロ・マストロヤンニが私生活で愛用したこの車。彼のような、洗練された大人の紳士だけが醸し出せる「節度あるエロティシズム」が、ザガートの描く曲線美には宿っています。ローマのカフェの前にこのフラミニアが停まっている姿は、もはや風景の一部として完成されていました。





アルファロメオ:伝説の「8C」と「6C」が語る、戦前・戦後の至高
今回のコンコルソにおいて、アルファロメオのブースはまさに「イタリアの国宝」が並ぶ神殿のような趣でした。
• ベストオブショーは8C 2900B Cabriolet Stabilimenti Farinaに
会場で圧倒的な後光を放っていたのが、スタビリメンティ・ファリーベストオブショーはの兄、ジョバンニが設立したカロッツェリア)の手によるこのカブリオレです。
世界で最も美しい車の一つと称され、先日も「ザ・ペニンシュラ・クラシックス」を受賞したばかりのこの個体。その長いボンネットの下には、伝説の直列8気筒ツインターボエンジンが眠っています。貴族的な気品と、戦うための高性能が完璧なバランスで共存するその姿は、彫刻という言葉さえ生温く感じるほどの「凄み」に満ちていました。


• 6C 2500 SS Berlinetta Pinin Farina:
一方、戦後のモダニズムへの架け橋となったのが、この「6C 2500 SS ベルリネッタ」です。
戦前の装飾的なデザインから一転、ピニンファリーナによる極めてシンプルで流麗なライン。特にフェンダーがボディと一体化した(ポンツーン・スタイル)その造形は、後のフェラーリやGTカーのデザインに決定的な影響を与えたことが一目で分かります。8Cが「過去の栄光の頂点」なら、6Cは「新しい時代への希望」を象徴しているかのようでした。


ジュリア TZ2:
そして、華やかなカブリオレたちの傍らで、一際鋭い殺気を放っていたのがこのTZ2です。先代TZの鋼管フレーム(トゥボラーレ)をさらに低く見直し、ボディをアルミからFRPへと変更。わずか620kgという車体に、オートデルタがチューンした170馬力のツインスパーク・エンジンを搭載した、まさに「公道を走ることを許されたレーシングマシン」です。ザガートの手による、より低く、より鋭くなったコーダ・トロンカの造形美。ボルゲーゼ公園の柔らかな光の中でも、この車だけはサーキットの緊張感を纏い、見る者を射すくめるような圧倒的な存在感を放っていました。12台のみが作られたこの希少な個体を間近に拝めたことは、今回の旅の大きなハイライトの一つです。


💡 執筆のポイント
• 希少性の強調: 12台のみという数字を出すことで、この個体がどれほど特別な存在であるかを読者に伝えます。



• 対比の完成: 8Cの「威厳」、6Cの「洗練」、そしてTZ2の「純粋な速さ」。この3台が揃うことで、アルファロメオというブランドの歴史が完璧に補完されます。TZ2の地を這うような低さと、機能美の極致とも言えるフォルム……。
