イタリア・ロンバルディア州の美しき湖畔、コモ湖。この地で毎年初夏に開催されるのが、世界的に有名なクラシックカーの祭典「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」。明日の23日(金)から25日(日) にかけて、歴史ある「グランド・ホテル・ヴィラ・デステ」と「ヴィラ・エルバ」を会場に、珠玉の名車たちが一堂に会するのだ。

100年の歴史と格式ある舞台
このイベントの始まりは1929年。世界恐慌前夜、上流階級の社交場として始まったこのコンコルソは、今や「クラシックカーのオスカー」とも称され、世界中のコレクターやメーカーが注目する舞台となっている。そして今年も、各年代を代表する希少なヴィンテージカーやコンセプトカーが登場し、そのデザインや保存状態、美しさを競い合いうのだ。筆者の独断と偏見に満ちた注目のエントリー車両をここで紹介する。
ALFA ROMEO – 6C2500 SS TIPO 256

エントリー車両詳細 — Concorso d’Eleganza Villa d’Este 2025
- モデル名:Alfa Romeo 6C 2500 SS Tipo 256
- 製造年:1939年
- エンジン:直列6気筒 2,443cc
- ボディ:Touring社製 クーペ
- エントラント:Corrado Lopresto(イタリア)
- 出場クラス:Class A — The Golden Era of Coachbuilding
この「6C 2500 SS Tipo 256」は、1930年代後期にアルファロメオが製造したスポーツクーペで、エンツォ・フェラーリが関与していた時代の名残を持つモデルで、特にTouring社による優雅なカロッツェリア(ボディデザイン)が特徴で、コンコルソのクラスAにふさわしい、クラシックなエレガンスを誇る。Corrado Lopresto氏はイタリアの有名なカーデザイナー・コレクターであり、ヴィラ・デステでもしばしば注目の存在ている。
ALFA ROMEO – 8C 2900 MM (1938)

- クラス:Class B(Speed meets Style: The Best of the Fast 1930s)
- 出展番号:28
- エンジン:直列8気筒 2,905cc
- コーチビルダー(車体製作):Touring(スパイダー・コルサ)
- 出展者:ラルフ・ローレン(Ralph Lauren) – アメリカの著名なファッションデザイナーであり、世界有数のクラシックカーコレクターとして知られている。 この8C 2900 MMは、1930年代のアルファロメオの栄光を象徴する傑作の一つで、ミッレミリア(Mille Miglia)などの耐久レースで活躍したモデルです。「MM」はその名の通りMille Migliaを意味し、レース仕様の軽量かつ高性能なスパイダーモデル。8C 35 Grand Prixマシンの技術を多く受け継ぎ、実戦での信頼性と高速性能を両立。シャシーやボディはツーリング社による軽量で空力的に優れた設計。世界的に現存数が少なく、非常に貴重な存在である。
ALFA ROMEO – TZ 1

出展番号:38
クラス:Class C
エンジン: 直列4気筒 1600cc
カロッツェリア: クーペ・ダ・ザガート(Coupé da Zagato)
出展者: Michael J. Malone(アメリカ)
Alfa Romeo TZ(Tubolare Zagato)は、1960年代にアルファロメオのモータースポーツ部門「Autodelta」と、ミラノのカロッツェリア「Zagato(ザガート)」との共同開発により誕生。軽量チューブラーフレームと空力を重視したザガート製のボディによって、当時のレースシーンで高い競争力を誇る。このモデルは、1963年から1965年までのわずか2年間しか製造されなかった希少車で、わずか100台前後が生産されたといわれている。全体的に小柄で軽快なスタイルで、リアの独特な「カットオフ」デザイン(通称:Kamm tail)が特徴。Michael J. Malone氏が所有するこの車両は、オリジナルに近い保存状態を保っており、コンコルソでの展示においてその正確なディテールや仕上がりの美しさが高く評価されることが期待されている。
ALFA ROMEO – TIPO B (P3)

製造年:1934年
エンジン:直列8気筒(Inline 8)、2900cc
カロッツェリア:Alfa Romeo 自社製(モノポスト=シングルシーター・グランプリカー)
出展者:Auriga Collection(ドイツ)
クラス:Class A – “Th
Alfa Romeo Tipo B, 通称 P3 は、1930年代のグランプリレースを代表する歴史的名車。
設計は伝説的エンジニア ヴィットリオ・ヤーノ(Vittorio Jano) によるもので、1932年に登場。アルファロメオとしては初のシングルシーター(モノポスト)レーシングカーであり、F1以前のグランプリシーンにおいて圧倒的なパフォーマンスを誇った。この1934年型は、改良を重ねた後期モデルで、ターボやスーパーチャージャーを備え、当時としては非常に高い出力を誇った。
ドライバーの タツィオ・ヌヴォラーリ(Tazio Nuvolari) や ルイジ・ファジオーリ(Luigi Fagioli) などがこのモデルで数々の勝利を挙げている。
筆者が最も注目するアルファロメオは8Cをベースにしたドッピアコーダである。

明日の公開まで公式には秘密にされているものの、初期のレンダリング画像やティーザー画像は自動車愛好家やコレクターの間で興奮を巻き起こしている。ドッピア・コーダ(通称「ダブルテール」)は、名高いアルファロメオ8Cコンペティツィオーネを、希少でエレガントなデザインを生み出すことで知られるミラノの名門コーチビルダー、ザガートが手掛けた、極めて限定的な再解釈と言えるだろう。