イタリアの青い制服に、トライデントの紋章が輝いた。

Maseratiの最新スーパーカー「MCPura」が、ついに国家憲兵隊Carabinieriに正式採用された。

任務は命を運ぶこと。臓器と血液の緊急輸送に挑む、この特別なマシンが象徴するのは、スピードと責任の融合だ。

Maserati MCPura、Carabinieriに“正式採用”

2025年10月27日、ローマの国家憲兵隊本部で行われた公式式典。
その場に現れたのは、漆黒のボディに赤いストライプが走るMaserati MCPura Carabinieri仕様。
ステアリングには、あのトライデント（三叉槍）のエンブレム。だが、今回の任務は華やかなショーではない。臓器・血液の緊急輸送――つまり命を運ぶ仕事だ。
この配備は、Maserati本社が直接関与したプロジェクト。リヴリア（公式塗装）は**Centro Stile Maserati（マセラティ・チェントロスティーレ）がデザインを担当。式典にはMaserati COOサント・フィチーリ（Santo Ficili）**が出席し、メーカーと国家が並び立つ象徴的瞬間となった。ベース車のMCPuraは、V6ツインターボ“Nettuno”エンジンを搭載。630 CVの出力とカーボンモノコック構造を誇る、Maseratiのピュアスポーツ哲学を体現する1台だ。
このMCPuraは、緊急灯や通信機器を備え、輸送中の臓器や血液を安全に保持し確実に届けるために、Carabinieriが持つ医療任務ユニットと連携して運用される。つまり、これは単なる「スーパーカー警察仕様」ではなく、国家医療インフラの一部として設計されたマシンなのだ。

Alfa Romeo Giulia Quadrifoglio：実務の“心臓部”

Maserati MCPura と同時に配備された Alfa Romeo Giulia Quadrifoglio（ジュリア・クアドリフォリオ） は、実はこのプロジェクトの「実務的中核」を担っている車両だ。つまり、Giulia Quadrifoglioは実際に医療輸送任務に使用される「実戦仕様」。冷却装置、緊急通信機器、GPSシステム、赤色灯を備え、トランクには臓器輸送用の専用ボックス固定スペースが設けられている。

この２台は完全に役割分担されている。
MCPura → 象徴的／広報的高速支援車、高速道路や都市部での交通クリアリング・先導を行い、輸送ルートの安全確保を担当する。つまりMC Puraは完全に先導車の役割で、公道上を走る一般車を道を譲るように露払いをするマシンである。臓器を積むわけではなく、輸送隊列の先頭を走り、緊急ミッションの時間短縮と象徴性を担っているのだ。
Giulia Quadrifoglio → 実務的輸送車、温度管理装置と冷却ボックスを備え、実際の輸送を担当するために徹した最速、かつ安全なマシンの役割だ。
この“二段構え”が今回のプロジェクトの肝である。

Carabinieriとは何か──「警察」ではなく「軍の盾」

日本では「Carabinieri（カラビニエーリ）」と聞いてもピンと来ない人が多い。
しかしイタリアでは、**国家を守る“もう一つの軍警察”**として絶大な存在感を持つ。

Carabinieriは国防省に属する**憲兵隊（軍属警察）**であり、一般の治安維持から軍事任務、VIP警護、国際派遣任務まで担う“国家の盾”と呼ばれる存在だ。
対して、テレビでよく見る青い制服の「Polizia di Stato（国家警察）」は、内務省に属し、市民の治安維持・交通取締・行政手続きを行う“民間警察”である。

以前の記事にランボルギーニのPoliziaもあるので、ご覧ください。
ランボルギーニ：ウルス・ペルフォルマンテのパトカーがデビュウ – Una bella macchina 2
ランボルギーニ：パドバからローマまで３時間で走るウラカン – Una bella macchina 2

因みにイタリアにはもう一つある警察組織が税務警察だ。 イタリア語でGuardia di Finanza（グアルディア・ディ・フィナンツァ） という。略称は “GdF”。主な任務は脱税・マネーロンダリング・会計不正の捜査。偽造品・密輸・麻薬取引などの経済犯罪対策。国境・港湾での税関取締（dogane）。欧州連合（EU）予算や補助金の不正利用の監視などである。

組織	所属	性格	主な任務
Carabinieri	国防省	軍属警察（憲兵）	治安維持＋軍事任務＋国家防衛
Polizia di Stato	内務省	民間警察	市民治安・交通・行政警備
Guardia di Finanza	経済・財務省	軍属警察（税務）	経済犯罪・脱税・密輸取締