マセラティ:ネットゥーノV6が水素エンジンに!6月13日ル・マンで世界初走行へ

MC20やグレカーレ・トロフェオの心臓部として君臨する、あの100%モデナ開発の3.0リットルV6ツインターボ**「ネットゥーノ(Nettuno)」。この純血のガソリンエンジンが、なんと最高出力480kW(約652馬力)を叩き出す「超高性能・水素燃焼エンジン」**へと変貌を遂げたというのだ。

今回のプロジェクトは、マセラティの技術トップであるダヴィデ・ダネシン率いるモデナの精鋭と、ドイツのボッシュ(Bosch Engineering)による極秘共同開発だ。エコな「燃料電池(FCV)」ではなく、あくまでシリンダー内で水素を爆発させてピストンを狂ったように上下させる「水素内燃機関(HICE)」。
ここで特筆すべきは、**「なぜベースエンジンにネットゥーノが選ばれたのか」**という点である。水素燃焼はガソリンに比べて燃焼速度が極めて速く、シリンダー内部には凄まじい超高圧と熱負荷がかかる。生半可な量産エンジンブロックでは、この過酷な圧力に耐えきれず一瞬で瓦解してしまうのだ。しかし、ネットゥーノには、F1由来のプレチェンバー(副室)燃焼システムや、ビレット(削り出し)並みに堅牢なドライサンプ構造が最初から備わっていた。ボッシュのエンジニアをして「これほど水素の爆発力に耐えうる基本骨格を持ったV6は、世界中を探してもマセラティ以外になかった」と言わしめた事実。これこそ、モデナの職人たちが設計図に込めた「過剰なまでのタフさとプライド」の証明に他ならない。ボッシュが持ち込んだ特殊な直接噴射システム(HIDI LCV)と、モデナが削り出した特製ピストンが組み合わさった時、ネットゥーノは牙を剥いたまま、環境に配慮したクリーンなモンスターへと生まれ変わった。

【舞台はル・マン。6月13日、サルト・サーキットに響く咆哮】

この「水素ネットゥーノ」は、単なるベンチテストの置物ではない。名門リジェ(Ligier)が開発したプロトタイプレーサー「Ligier JS2 RH2」のミッドに文字通り肉体としてマウントされ、すでに実戦準備を整えている。

そして運命の日は、来週 2026613日(土)。

世界最高峰の舞台「ル・マン24時間レース」の本戦直前、静まり返ったサルト・サーキットの路面を、この純白の水素V6レーサーがデモラップとして駆け抜けることが公式に確定した。ミュルザンヌ・ストレートに響き渡るであろう、あの直噴V6ツインターボの獰猛な咆哮。しかし、マフラーから吐き出されるのは、有害な排気ガスではなく、ただの「水蒸気」なのだ。これほどドラスティックで、これほどカタルシスを感じるギミックが他にあるだろうか。

【美しき機械(Bella macchina)の未来】

かつて、ギブリIIをはじめとするAM330系ビトゥルボ(ツインターボ)の時代、マセラティのエンジンは常にじゃじゃ馬で、オイルの匂いと熱気に満ちていた。時代が変わり、燃料がガソリンから水素になろうとも、モデナの男たちが「シリンダーの中で何かが爆発する高揚感」を諦めていないという事実に、応援しようではないか。「内燃機関の延命」ではない。これは、イタリアン・エンジニアリングが未来のカーボンニュートラルという高い壁を、自らのヘリテージと技術力で正面からぶち破りにいった「聖戦」だ。

6月13日、フランスの地でネットゥーノが上げる最初の産声(エキゾーストノート)を、我々エンスーは耳を澄まして待つべきである。モデナの魂は、まだまだ我々を退屈させそうにない。

写真:ジュリアン・デルフォス/DPPI

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