マセラティファン、そしてイタリアン・モータースポーツを愛する者にとって、ボローニャという街は特別な意味を持ちます。

マセラティ創業の地のプレート

1914年12月1日、アルフィエーリ、エットーレ、エルネストのマセラティ兄弟が自らの名を冠した最初のガレージ「Società Anonima Officine Alfieri Maserati」を開設した場所——それが、ボローニャチェントロストリコ(旧市街)の静かな路地に佇むVia de’ Pepoli 1/a(ペポリ通り1/a番地)です。
今回ご紹介するのは、この伝説の産声を上げた小さな工房跡を拠点に動いている『The First Garage Project(Officine Alfieri Maserati)』です。
■ 車両展示ではなく「魂と知の継承拠点」として
「自動車のミュージアム」と聞くと、広大な敷地に何十台ものヒストリックカーがズラリと並ぶ姿を想像するかもしれません。しかし、中世以来の美しい街並みと交通規制(ZTL)に守られたボローニャ旧市街において、このプロジェクトが目指す姿は全く異なります。
ここペポリ通り1/aで進められているのは、実車の展示館ではなく、マセラティ兄弟の足跡、当時の設計図面、技術文書、そしてエンジニアリング精神を保存・研究するための「歴史アーカイブ・メモリアル拠点」の形成です。
マセラティ一族の熱意や地元ボローニャの文化コミュニティが手を携え、「ブランドの原点」を純粋な文化遺産として未来へ繋ぐ試みが静かに、しかし力強く進められています。
■ 世界中のファンと共創する「アンケート」の理由
プロジェクトの公式ポータルサイト(officinealfierimaserati.com)を訪れると、ページ下部に世界中のファンに向けたアンケート(Survey)が設置されていることに気づきます。
単なる観光案内サイトに一見そぐわないこのアンケートには、非常に深い意味が込められています。


- 世界の熱量を視覚化する:ペポリ通りの保存やデジタルアーカイブ化に対し、世界のエンスージアストが何を求めているのかを数値化すること。
- 草の根の歴史資料を集める:個人コレクターが眠らせている創業期やO.S.C.A.時代の写真・資料の情報を募ること。
- 未来の拠点化へのエビデンス:ボローニャ市や関係機関に対し「この場所が世界からどれほど愛されているか」の根拠を示し、恒久的な保存・活動基盤を整えること。
つまりあのアンケートは、私たちが歴史の「目撃者」から「共創者」へと参加するためのインビテーション(招待状)なのです。もちろん筆者もアンケートに既に回答している。


■ エミリア・ロマーニャ巡礼の新たな目的地
モデナのチロ・メノッティ工場やパニーニ・コレクションで美しい実車たちに感嘆したあとは、ぜひボローニャのペポリ通り1/aを訪れてみてください。
石畳の路地に立ち、かつてトライデントの伝説が産声を上げたその瞬間に思いを馳せる——。派手な展示物がないからこそ味わえる、濃密で静かな「モータースポーツのロマン」がそこには漂っています。
ボローニャを訪れる際は、ぜひこの偉大な歴史の源流に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。
