サビオネータの静寂から一転、次に向かったのはサンターガタ・ボロニェーゼにあるランボルギーニ博物館(MUDETEC)。今回の主目的は、伝説の名車「ミウラ」に焦点を当てた特別展示です。
理想都市から聖地へ ―― ミウラ、その永遠の美しさに浸る
サビオネータの「静寂」を後にし、車を走らせること約1時間。次なる目的地は、打って変わって強烈なエネルギーを放つ場所、サンターガタ・ボロニェーゼの**ランボルギーニ博物館(MUDETEC)**です。


今回、どうしてもこのタイミングで訪れたかった理由。それは、ここで開催されている**「ミウラ(Miura)特別展示」**をこの目に焼き付けるためでした。
究極の「美」との再会
1966年に発表され、スーパーカーの定義を塗り替えたミウラ。
展示エリアに足を踏み入れると、マルチェロ・ガンディーニの手による、あの流麗かつ挑戦的なシルエットが並んでいます。サビオネータが「ルネサンスの理想」を形にした街ならば、ミウラはまさに「現代の動く芸術」としての理想形。
まつ毛のようなヘッドライトのディテール、地を這うような低いルーフライン。実車が放つオーラは、写真や言葉では到底伝えきれない圧倒的なパワーがあります。


12気筒の鼓動を感じて
今回の特別展では、ミウラの開発背景や技術的な革新性についても深く掘り下げられていました。横置きに積まれたV12エンジンの造形美、そして当時のエンジニアたちが抱いた情熱。
サビオネータで感じた「時が止まったような退屈さ」とは対照的に、ここにあるのは「今にも動き出しそうな、凝縮された時間」です。


伝統と革新のクロスオーバー
昨年のマントヴァ、午前中のサビオネータ、そして午後のランボルギーニ。
イタリアの旅は、常にこうした「古典」と「モダン」、「静」と「動」の対比が面白い。


ヴェスパジアーノ公が街というキャンバスに理想を描いたように、フェルッチオ・ランボルギーニもまた、自動車という機械に自らの理想を投影しました。時代は違えど、完璧を追い求めた男たちの執念が、このエミリア・ロマーニャの地に息づいていることを改めて実感する一日となりました。
幻の1台:ミウラ・ロードスター (Bertone Miura Roadster)
この車は1968年のブリュッセル・モーターショーで、ベルトーネによって発表された唯一のプロトタイプです。単に屋根を切り落としただけではなく、ロードスターとして完璧なプロポーションを実現するために、徹底的な再設計が施されています。
• 唯一無二のシルエット:
ルーフを取り払うだけでなく、ロールバーもなくし、リアのエンジンカバーのデザインを一新。V12エンジンを遮るルーバーが取り除かれ、その心臓部が剥き出しになる「オープン」な姿は、当時のスーパーカー界に衝撃を与えました。
• 「ZN 75」としての数奇な運命:
発表後、この車はILZRO(国際亜鉛鉛研究機構)に売却され、亜鉛やアルミニウムなどの新しい合金パーツを多用したデモンストレーションカー「ZN 75」としてメタリックグリーンに塗り替えられてしまいました。長年その姿で知られていましたが、近年の修復により、発表当時の鮮やかなライトブルーのオリジナル仕様に戻されました。


• 「究極」の解放感:
サイドウィンドウも取り払われ、空気の流れを計算し尽くした低いフロントウィンドウ。サビオネータの完璧な街並みと同様に、このロードスターもまた「機能を超えた純粋な美」を追求したひとつの理想形と言えるでしょう。
サビオネータの「静止した理想」を見た後に、この「走る理想」の頂点とも言えるミウラ・ロードスターを見る。これほど贅沢なコントラストはありません。
