フェラーリは新型車の高圧パワーケーブルをはじめとする電装系(ワイヤーハーネス)に、従来の「銅」ではなく「アルミニウム」の本格採用を進めているという。これによって、車両全体の配線重量を最大20%も削減することに成功したという。
電気伝導率において銅に劣るアルミニウムをあえて採用することは、エンジニアにとっては決して簡単なパズルではない。同じ電流を流すためには線を太くする必要があり、限られたスペースの奪い合いになるからだ。それでも比重が圧倒的に軽いアルミを選ぶあたりに、1グラムの贅肉をも削ぎ落とし、完璧な運動性能を追求しようとするフェラーリの凄まじい狂気と執念といえる。


昨今のコモディティ市場における「銅の価格高騰に対するコスト削減」と見るかもしれない。確かにマーケットの現実はシビアだ。生成AI向けデータセンターの爆発的な建設や世界的な電動化シフトにより、今年1月には銅価格が1トンあたり1万5,000ドルに迫る史上最高値を記録した。アルミの4倍以上という圧倒的な価格差を前に、経済合理性の観点から「脱・銅」へ舵を切るメーカーは後を絶たない。
だが、フェラーリの広報担当は「我々は安いからアルミを選んだのではない。より優れたパフォーマンスを発揮する素材を選んだのだ」と言い切る。
先月発表されたばかりの、フェラーリ史上初となる純電気自動車『Luce(ルーチェ)』やPHEVの296シリーズといった最新世代において、この選択はコストダウンではなく、重量級のバッテリーを従えながらも跳ね馬としての「軽快さ」を保つための、冷徹なまでの機能主義なのだろう。
ボディ、ブロック、サスペンション、そしてついに車の『血管』にまで至ったアルミニウムの純化。マニアックな経済のパワーゲームと、アナログな官能性を誰よりも大切にしてきたマロネッロの哲学が、目に見えない配線の1本で交差している。電気の時代をどう美しく手なずけるのか。フェラーリの飽くなき挑戦は、やはりどこまでも「Una bella macchina(美しき車)」への執着に満ちている。
