5月後半、世界のクラシック・マセラティ界隈において、驚くべき「日伊のシンクロニシティ(同時共鳴)」が起きている。
先週末、ここ日本で恍惚の咆哮を上げたビトゥルボたちが、その熱気のバトンをそのまま、聖地モデナの石畳へと引き継ごうとしている。そこにあるのは、言葉の壁を越え、映像(YouTube)を通じても世界へ伝播する「日本人のマセラティ愛」と、かつてブランドを救ったあの風雲児への最大級のオマージュだ。
■ 駿河湾を見下ろす芝生に並んだ、日本の「執念と美学」
先週末の5月23日・24日、新緑の日本平ホテル。富士山と駿河湾を望む美しい庭園の芝生を埋め尽くしたのは、全国から集結したビトゥルボ系マセラティの群れ――**「BITURBO FESTA 2026」**である。






9年ぶり、3度目の開催となったこの伝説的なフェスタ。初期のキャブ仕様から、222E、ギブリⅡ、カリフ、そして最終進化系の3200GTまで、日本のオーナーたちが「執念」とも言える愛情でコンディションを維持してきた個体が一堂に会した。



メーカー公式からは時に「蓋をしたい暗黒時代」のように扱われることもあるデ・トマソ期。しかし、ツインターボが過給を始めた瞬間のあの暴力的な官能を知る日本のエンスージアストたちは、パーツ確保の荒波を乗り越え、独自の強固な連帯感でこの美しき野獣たちを守り抜いてきた。新緑の日本平に響き渡ったV6ツインターボの咆哮は、日本の自動車文化の成熟度と底力を証明するに十分なものだった。



■ 世界が驚く、日本のビトゥルボ・サポーターたち
近年、日本のオーナーたちが手塩にかけて維持しているビトゥルボ・ファミリーの質の高さは、YouTubeなどの動画を通じてイタリア本国や世界のコレクターからも熱い視線を浴びている。
動画の中で、自らの愛車について我が子のように熱っぽく、そして誇らしげに語る日本のオーナーたちの姿。彼らの細やかなメンテナンスへの拘りや、オリジナル仕様を尊ぶ美意識こそが、極東の地でこれほど多くのビトゥルボをサバイベートさせてきた原動力だ。画面から伝わる「日本人の情熱」は、間違いなく本国イタリアのクラブ関係者たちの胸をも打っている。
■ 舞台はモデナへ。旧市街をジャックする「De Tomaso Day」の衝撃
そして今週末、5月30日(土)。まるで日本のエンスージアストたちの熱気に触発されたかのように、本国イタリアの聖地モデナが「デ・トマソ一色」に染まる。
「Motor Valley Fest 2026」の公式プログラムとして開催される**「De Tomaso Day(De Tomaso Reloaded)」、解禁されたばかりの「ビトゥルボ・クラブ・イタリア第90回記念ミーティング」**だ。



当日は、モデナ旧市街の象徴であるローマ広場(ドゥカーレ宮殿前)やカヴール広場が、世界中から集まったデ・トマソ・パンテーラやマングスタ、そして100台規模のビトゥルボ・ファミリーで完全に埋め尽くされる。


■ なぜ今、アレハンドロ・デ・トマソなのか?
今回のイタリアのイベントが極めて異例で、そしてディープなのは、フェラーリやランボルギーニといった華やかな現行スーパーカーではなく、**「アレハンドロ・デ・トマソの庇護のもとで製造された車両」**だけにスポットライトを当てている点だ。
独裁的で、エキセントリックで、常に毀誉褒貶が激しかったアレハンドロ。しかし彼がいなければ、80年代にマセラティというブランドはこの世から消滅していたかもしれない。彼が蒔いた「ビトゥルボ」という狂気の種は、ガンディーニやザガートといった巨匠たちの手を経て、強烈な個性を放つ芸術品へと昇華した。
16:00の展示終了後、モデナの古い石畳の路地に反響するであろう、ビトゥルボのV6ツインターボとパンテーラのアメリカンV8の重低音の競演。それは、あの激動の時代を「モデナの王」として駆け抜けたアレハンドロへの、時を超えた最大の敬意(リスペクト)の表明なのだ。
■ 日伊のシナジーが証明するもの
極東の島国の緑豊かな丘で、日本のファンがカメラの前で語った熱いマセラティ愛。そして、エミリア=ロマーニャの歴史ある広場で、地元のコレクターたちが響かせる咆哮。
1週間のタイムラグを挟んでシンクロした「デ・トマソ/ビトゥルボ・ブーム」の再燃。
これは単なる偶然ではない。時代がどれほど電動化や効率主義へと傾こうとも、あの時代にしか存在しなかった「人間のエゴと情熱が造り上げた機械」に魅了された人間の魂は、国境を越えて完全に共鳴している。
今週末、モデナの空に響き渡るであろうサウンドに耳を澄ませながら、私たちは日本平で見たあの美しい芝生と、三叉戟の誇りを改めて噛み締めることになるだろう。
Viva la Meccanica Modenese(モデナの機械に栄光あれ)。そして、日伊の偉大なるDreamers(夢追い人たち)に乾杯。
