10月21日、フェラーラの歴史と建築美を堪能したあと、旅はさらなる強行スケジュールへと突入した。西から東へ、エミリア=ロマーニャの大地を駆け抜け、車はアドリア海沿岸の古都ラヴェンナ(Ravenna)へと滑り込む。


ラヴェンナは、西ローマ帝国の末期(402年)に首都が置かれ、その後東ゴート王国の首都、さらにはビザンツ(東ローマ)帝国のアドリア海側の拠点(ラヴェンナ総督府)として栄えた激動の歴史を持つ。異なる文化と宗教が交差したこの地には、5世紀から6世紀にかけて造られた初期キリスト教建築群が数多く残されており、その8つの建造物が「ラヴェンナの初期キリスト教建築物群」としてユネスコ世界遺産に登録されている。
光とモザイクが織りなす極上の聖域「サン・ヴィターレ聖堂」
まず向かったのは、ラヴェンナの初期キリスト教美術の頂点と称されるサン・ヴィターレ聖堂(Basilica di San Vitale)だ。


八角形の独特な集中式建造物であり、レンガ造りの重厚で質素な外観からは想像もつかないような、息をのむ大空間が内部に広がっている。アーチをくぐりアプス(後陣)を見上げると、そこは一面の黄金と鮮やかなエメラルドグリーンに彩られたモザイク画の小宇宙だ。


天球の上に腰掛けるキリストを中心に、天使や聖人、そして神聖な羊を取り囲む植物文様が隙間なく敷き詰められている。光がガラスや金のテッセラ(モザイク用の小石・ガラス片)に反射し、揺らめくように空間全体を輝かせる様は、まさに天上の楽園を地上に再現したかのようだ。
聖女たちの壮大なる列進「サンタポッリナーレ・ヌオーヴォ聖堂」
続いて足を運んだのは、東ゴート王テオドリックによって建てられたサンタポッリナーレ・ヌオーヴォ聖堂(Basilica di Sant’Apollinare Nuovo)である。隣接するレンガ造りの円形鐘楼が、青空に向かって印象的なシルエットを描いている。この塔も傾いている。イタリアの塔は今やほとんど傾いている。


三廊式のバシリカ様式の内部に入ると、木製の格天井の下、身廊の両壁面いっぱいに描かれたモザイク画が迫ってくる。


圧巻は壁面下部に流れるように描かれた大行列だ。聖母子のもとへと歩みを進める聖女たちの列進、そして反対側の壁に描かれた聖人たちの行進。金色の背景の中に、白い衣を纏った聖女や天使たちが整然と並ぶ様は、静寂でありながら力強いリズムを刻んでいる。細部まで緻密に組み上げられたモザイクの粒子一つひとつが、1500年の時を超えて今なお色褪せぬ輝きを放ち続けている。


時間との戦いとなった10月21日のドライブ旅行。フェラーラのエステ家が築いた赤煉瓦の宮廷文化から、ラヴェンナの悠久のモザイク美へ。北イタリアの地で深遠な歴史の層を次々とめくるような、濃厚で忘れがたい一日となった。
