モデナ駅からローカル列車(Regionale)に揺られること、わずか15分足らず。北へと伸びる単線を抜けた先に、エミリア=ロマーニャの隠れた名都市カルピ(Carpi)が静かに佇んでいる。

観光客の喧騒から離れたこの穏やかな小都市には、訪れた者を一瞬で圧倒する規格外の空間が存在する。街の中心に広がるマルティーリ広場(Piazza dei Martiri)だ。
イタリア最大級のスケール――マルティーリ広場の壮観


「イタリアで2番目に広い広場」と称されることも多いこの広場は、南北約276メートル、東西約60メートル、面積にして1万6,000平方メートルを超える圧倒的なスケールを誇る。
都市の規模に対してあまりにも巨大なこのパノラマに足を踏み入れると、遠近感が狂うような錯覚すら覚える。
52連の連続アーチ(Portico del Grano): 広場の西側を覆い尽くすのは、15世紀の領主アルベルト3世・ピオによって整備された壮大なアーケード。52本もの美しい柱が一直線に並ぶ様は、圧巻の一言に尽きる。
ピオ城(Castello dei Pio): 東側には、中世からルネサンス期にかけてこの地を治めたピオ家の居城が重厚に佇み、幾重にも重なるタワーと城壁が格式高き歴史を物語る。
サンタ・マリア・アッスンタ大聖堂(Duomo di Carpi): 広場の北端には大聖堂が鎮座し、広場全体を見守るように荘厳なファサードを構えている。
ルネサンスの理想都市が魅せる、静かな余白
ヴァチカンのサン・ピエトロ広場やパドヴァのプラート・デッラ・ヴァッレなど、イタリアには「広大さ」を競う名所が点在するが、ここカルピのマルティーリ広場が持つ魅力は、その幾何学的な美しさと「静けさ」にある。
かつてルネサンスの領主たちが追い求めた「理想都市」の構想が、500年の時を超えて今なお手つかずのまま残されているかのようだ。
カフェのテラス席に腰を下ろし、ランブルスコのグラスを傾けながら、広大な石畳を渡るエミリアの風を感じる。モデナの日常からほんの少し足を伸ばすだけで出会えるこの静謐な大空間は、旅の途中に思わぬ深い余韻を残してくれる。
